AMメーカーがグローバルブランドへの道を歩み始めているシグナルを読む
中国の3Dスキャンメーカーが世界的なデザイン賞を4冠受賞し、売上31%増を達成した。こうした発表を目にしたとき、多くの人はこう思うだろう。「ふーん、それで?良い機器にデザインって関係ある?性能の話ではないよね?」と見過ごすかもしれない。しかしAM Insight Asiaはこのニュースを別の視点で見ている。
SHINING 3Dの2025年業績が示すもの
中国・杭州に本社を置く3Dスキャン・メトロロジー大手のSHINING 3Dは、2025年通期の売上高が2億2100万ドルと前年比31%増を達成したと発表した。海外売上は46%増と国内を大きく上回る伸びを見せており、売上の20%超をR&Dに再投資している。
この数字を市場全体と比較すると、その意味がより鮮明になる。グローバルの3Dスキャナー市場全体の成長率は年率10〜15%程度と予測されている。SHINING 3Dの海外売上46%増はその市場平均を3倍近い速度で上回っている。さらに構造光3Dスキャナー分野では中国市場そのものがCAGR約20%という高成長を続けているにもかかわらず、SHINING 3Dはその中国市場をも上回るペースでグローバル展開を加速させている。
単なる好決算ではない。市場が成長している中で、SHINING 3Dはその成長を大きく超えるペースでシェアを広げている。この事実が、今回の発表のもうひとつの顔である受賞ニュースと組み合わさったとき、見えてくるものがある。
デザインと機能は表裏一体
同社はこの発表と同時に、2026年のRed Dot AwardとiF DESIGN AWARDで計4冠を獲得したことを明らかにした。Red DotとiF Design Awardはいずれも世界三大デザイン賞に数えられるドイツ発の国際的な賞である。日本で広く知られるグッドデザイン賞は国内認知度が高い一方、世界三大デザイン賞には含まれない。
「良い機器にデザインは関係ない」と思う人も多いだろう。しかし市場で生き残っている機器を見渡すと、例外なくデザインが洗練されている。やぼったいデザインのままグローバル市場で勝ち続けた産業機器は存在しない。デザインの洗練は結果ではなく条件なのだ。
これはデザイン哲学の世界では古くから語られてきた原則だ。「Form follows function」、機能が形を決めるという考え方である。機能を極めていくと、必然的に無駄が削ぎ落とされ、デザインも洗練されていく。Dieter RamsがBraunで体現し、Appleがそれを引き継いだ思想だ。iF Design Award自体がこの哲学を体現する賞であり、RamsのBraun時代の製品はiF Design Awardを繰り返し受賞している。
Apple、Sony、Dyson、BMW、Bosch。誰もが知るグローバルブランドは例外なくRed DotやiF Design Awardという同じ道を通ってきている。分野は異なっても、この道を通ることがグローバル市場で信頼されるブランドになるための共通言語として機能してきた。
受賞した4製品を見ると、その評価ポイントが見えてくる。FreeScan Omniはワイヤレス化と一体設計によるケーブルレスの計測体験、EinScan Rigilはコンピューティング・ディスプレイ・スキャン機能の統合と直感的なインターフェース、Aoralscan Eliteは124グラムという軽量設計と歯科現場でのユーザー体験が評価された。いずれも「見た目」ではなく「機能の完成度」が評価されている。機能を極めた結果としてデザインが洗練されるという原則がここに現れている。
産業機器メーカーがこの賞をどう位置づけているかは、ABBの言葉が示している。同社はiF Design AwardとRed Dot Award受賞に際してこう語っている。「スマートで思慮深いデザインが製品の受け入れを促進する。体験が信頼を形成する」。B2Bの産業機器であっても、意思決定者に対してブランドとして認められることは競争優位性そのものだという認識がグローバルの産業機器メーカーの中に根付きつつある。
AM Insight Asia の視点
注目すべきはSHINING 3Dがこの2つの発表を同時に行ったことだ。AM業界の主要プレイヤーの多くが世界三大デザイン賞への応募を確認できない中、SHINING 3Dは2022年から継続的にこの道を歩んでいる。
AM業界はこれまで技術スペックと業界内の賞で完結してきた。しかしSHINING 3Dが今やっていることは、AppleやBMWやDysonが当然のように通ってきたグローバルブランド構築の道に、意識的に踏み込んでいるということだ。
デザイン賞取得というグローバルブランドへの投資と、海外売上46%増という結果は同じコインの表と裏である。この2つを切り離して読むのではなく、セットで読むことにこそ意味がある。SHINING 3Dの2025年業績とデザイン賞受賞が同じ発表の中に並んでいるのは、偶然ではなく意図的な戦略の表明として読める。
B2Bの産業機器であっても、最終的な意思決定者はスペックシートだけで判断しない。誰もが知るブランドとして認識されることは、競争優位性そのものである。市場平均を大きく上回るSHINING 3Dの海外成長は、その戦略が機能し始めていることを示唆している。
日本を含むアジアのAMメーカーにとって、これは見過ごせないシグナルだ。技術で勝つだけでなく、ブランドで認められる競争が始まっている。





