ニコン、Vastへの投資を発表 宇宙AM戦略をさらに強化

3月 9, 2026

Nikon invests in Vast to advance its additive manufacturing space strategy

宇宙産業に向けた積層造形戦略の加速

ニコンは2026年3月6日、NFocusファンドを通じて、米国カリフォルニア州ロングビーチに拠点を置く商業宇宙ステーション企業Vast, Inc.(CEO:Max Haot)への投資を発表した。この投資は、ニコンが進める金属積層造形の宇宙産業向け応用をさらに加速するものとして注目される。

ニコン、NFocusファンドを通じてVastに出資

Vast, Inc.は、商業宇宙ステーションの設計・開発・製造・運用を手がける企業で、2030年に退役予定の国際宇宙ステーション(ISS)の後継となる次世代商業宇宙ステーションの実現を目指している。同社が開発中のHaven-1は2027年の打ち上げを予定しており、2030年までに人類の恒久的な宇宙滞在を可能にする計画だ。

ニコン Ventures CorporationおよびNikon Advanced Manufacturing Inc.の社長兼CEOであるHamid Zarringhalam氏は「ニコンと同様、Vastはテクノロジー主導の企業であり、ビジョンの共通点と刺激的なシナジーの可能性を感じている」と述べた。Vast CEOのMax Haot氏も「ニコンの精密イメージング、先進製造、宇宙科学における実績は比類なく、その長期的なコミットメントは我々のミッションと強く共鳴する」とコメントしている。

拡大する宇宙AM戦略 JAXA・ArianeGroup・Rocket Labとの連携

ニコンの宇宙向けAM戦略は、今回のVast投資だけにとどまらない。その中核を担うのがNikon SLM Solutionsだ。

2023年に買収したSLM Solutions(現Nikon SLM Solutions)は、大型・超大型フォーマットのL-PBF(レーザー粉末床溶融結合)システムを強みとする金属AMの世界的リーダーだ。最大12基のレーザーを同時稼働させる世界初のマルチレーザーシステムを搭載し、600×600×1500mmという大型部品の製造を可能にする。航空宇宙分野で求められる複雑形状・軽量化・高強度を同時に実現するこの技術は、米国の航空宇宙・防衛産業ですでに高い評価を得ており、Collins Aerospace、GKN Aerospace、Safranなどの主要企業に導入されている。

こうした実績を背景に、ニコンのAM技術はJAXAの宇宙戦略基金プログラムに採択された。ロケット部品製造に向けたL-PBFとDED(指向性エネルギー堆積)を組み合わせた金属3Dプリンティング技術の確立を担うプロジェクトとして選定されている。

また、ニコンSLMソリューションズはArianeGroupと超大型AMの宇宙応用に向けた戦略的パートナーシップを締結。さらにRocket Labとは、次世代超大型フォーマット金属AMプラットフォームの複数台予約に関する覚書(MoU)を締結している。今回のVast投資により、ニコンは宇宙産業における主要プレイヤーとの関係をさらに強固にした。

AM Insight Asia の視点

2月5日、ニコンはAM事業において約5億7700万ドルの減損損失を計上すると発表した。AMIAはその際、SLM Solutions買収の判断プロセスや情報開示のあり方に疑問を呈した。

しかし、AM戦略という観点では、ニコンは着実に前進している。JAXA採択、ArianeGroupとの提携、Rocket LabとのMoU、そして今回のVast投資。Nikon SLM Solutionsという世界で戦える武器を手に入れたことで、金属AMにおけるニコンの存在感は確実に大きくなっている。米国の航空宇宙産業で積み上げた実績が日本の宇宙開発にも還流し、ニコンは日本の航空宇宙分野における金属AMを牽引していく存在になりつつある。

減損の問題についての詳細は以下の記事を参照。ニコン、AM事業で約5億7700万ドルの減損損失を計上 SLM買収をめぐる疑問