韓国海兵隊、MeltioロボットDED金属3Dプリンターを導入

5月 12, 2026

Republic of Korea Marine Corps × AM Solutions. Containerized metal 3D printing system by Meltio and KUKA.

製造中止・調達困難・破損修理。古い装備を動かし続けることの重さ。

025年2月19日、大韓民国海兵隊ロジスティクスグループは、コンテナ型モバイル金属3Dプリンターの導入を発表した。KAAV(水陸両用強襲装甲車)をはじめとする海兵隊固有の装備を対象とした、韓国軍で初めてのロボット型軍事3Dプリントシステムの実装だ。3月26日にはMeltioAM Solutionsが正式にプレスリリースを発表し、アジア初の軍事導入として世界的に注目を集めた。

軍事装備は「古くなったから替える」では済まない

民間企業がPCを新型に買い替えるような感覚で、軍事装備を更新することはできない。戦車1両、装甲車1台のコストは数十億円規模に及ぶ。調達には予算措置と議会承認が必要で、新型への移行には乗員訓練や整備体制の再構築も伴う。旧型と新型が長期間混在して運用されることも珍しくない。

つまり軍隊にとって「古い装備を長く・確実に動かし続ける」ことは、選択肢ではなく義務だ。

しかしここに深刻な問題がある。装備の使用年数が長くなるほど、パーツが枯渇していく。メーカーがすでに製造ラインを閉じているケースもある。調達できたとしても数ヶ月待ちになることも珍しくない。KAAVのような海兵隊固有の特殊装備であれば、なおさらだ。破損した部品は全とっかえが基本で、まだ使える部分まで廃棄することになる。

この「部品枯渇・調達困難・修理の非効率」という壁が、装備の稼働率を下げ、整備スケジュールを狂わせ、作戦行動に影響を及ぼしてきた。そして見落とされがちなのが安全性の問題だ。部品が手に入らなくても装備を動かさなければならない状況が続けば、整備不良は事故に直結する。軍用車両・航空機・艦船における整備不良は、戦闘以外での人命損失につながりかねない。

AM SolutionsとMeltioのLW-DED(レーザーワイヤー指向性エネルギー堆積)技術は、この壁に対する一つの答えだ。設計データさえあれば、製造中止になった部品でも再生産できる。破損箇所には材料を肉盛りして修復できる。全とっかえではなく、必要な箇所だけを直す。調達リードタイムはゼロになる。在庫は「物理的なパーツ」から「デジタルデータ」に置き換わる。

海兵隊ロジスティクスグループのメンテナンス大隊長、キム・ソンナム中佐は次のように述べた。「金属3Dプリンターの導入は、運用・整備コストの削減だけでなく、修理部品の調達困難による整備スケジュールの遅延防止にも重要な意義を持ちます。安定したメンテナンスサポートを実現する最高のロジスティクス支援体制を維持していきます。」

コンテナ型が変える軍事3Dプリントの展開力

今回導入されたシステムの名称はwith:Holonic。LW-DEDロボット積層造形技術をコンテナ内に統合したモバイル製造システムだ。Meltio Engineをベースとした産業用ロボットアームにDEDヘッドを搭載し、ステンレス鋼、チタン、銅、インコネルをはじめとする幅広い金属合金に対応する。今回の導入ではKUKAのロボットアームが使用されているが、システムとしてABB、Fanuc、Yaskawa など主要メーカーにも対応可能だ。

Left: LW-DED deposition in action. Right: Meltio DED head on a KUKA robotic arm.
左:レーザーワイヤーDEDヘッドによる金属積層の瞬間。右:KUKAロボットアームに搭載されたMeltio DEDヘッド。 | Photo: AM Solutions, Meltio

このシステムの核心は「動かせる」ことだ。コンテナはクレーンやフォークリフトで移動が可能で、前線基地や演習地への展開、車両に搭載したままでのメンテナンスにも対応できる。さらに韓国科学技術研究院(KIST)との共同開発によるWXRベースのリモートコラボレーション機能により、遠隔からの技術支援も可能になっている。

韓国は国土が広くはなく、兵站線の長さが直接的な課題になるわけではない。しかしコンテナ型の移動式生産拠点には別の意義がある。有事の際、固定された生産・補修拠点は攻撃対象になりうる。移動できる生産拠点は分散・隠蔽が可能で、リスクに応じて柔軟に展開できる。

AM Solutions CEOのキム・ダジョン氏は「防衛分野への参入はあくまで始まりに過ぎない」と述べた。海兵隊ロジスティクスグループも今後2年間で、モバイル金属精密加工機や発電機などの野外作戦用サポート機器の拡充を計画している。

AM Insight Asia の視点

今回の韓国海兵隊の取り組みは、軍事ロジスティクスが抱える普遍的な課題に向き合うものだ。しかしこの課題は、韓国だけの話ではない。

アジアに目を向けると、予算制約が大きい国ほどこの問題は深刻だ。最新装備への更新が現実的でない国では、古い装備を安全に・確実に動かし続けることが死活問題になる。部品が手に入らなければ整備できない。整備できなければ、老朽化した装備をそのまま使い続けることになる。それは人命に関わる問題だ。DEDによるオンデマンド部品製造は、そうした国々にとって単なるコスト削減の話ではなく、装備の安全性を維持するための手段になりうる。

また国土が広く補給線が長い国では、コンテナ型の移動式生産拠点がさらに大きな意味を持つ。後方から大量の部品を輸送するのではなく、製造設備そのものを前線近くに展開する。プロイセンの軍事思想家カール・フォン・クラウゼヴィッツが19世紀に記した「兵站は戦略の基盤である」という言葉が示す通り、補給線への依存を減らすことは作戦の自由度を根本から変えうる。国によっては、このコンテナ型DEDが兵站問題そのものへの答えになる可能性もある。

ただし、DEDを導入すれば軍事ロジスティクスの問題がすべて解決するわけではない。DEDで造形した部品は積層痕が残り、寸法精度にも限界がある。精度が求められる部品には別途後加工が必要になるケースもある。軍事部品の中にはその精度要求が特に厳しいものも多く、DEDだけで完結するケースと後加工が必要なケースを見極める知見の蓄積が重要だ。今後はDEDを起点としつつ、切削などと組み合わせたハイブリッドな運用が求められてくる場面も増えてくるかもしれない。極寒、塩害、振動、高温、高圧。失敗が人命に直結する軍の現場では、要求水準は極めて高く、妥協は許されない。新しい技術を持ち込んだ側に向けられる言葉は、時に厳しいものだろう。それでも逃げずに向き合い、一つひとつ積み上げてきた経験こそが、仕様書や特許には現れない信頼の厚みになる。

Meltioはその道を着実に歩んできた。USSバタアン艦上での部品製造、シャルル・ド・ゴール空母を支援したフランス海軍、装甲車両の維持整備に使うスペイン陸軍、ジェットエンジン修理に活用するスペイン空軍、そして今回の韓国海兵隊。陸・海・空、それぞれの異なる過酷な環境と現場の要求に向き合ってきた実績は、同じ技術方式を持つ他社には一朝一夕には真似できない厚みをMeltioに与えている。

軍事におけるDED金属3Dプリント技術は、今後世界の軍隊にとってますます重要な役割を果たしていく技術になるだろう。そのとき最も信頼される企業は、最も多くの現場の洗礼を受けてきた企業かもしれない。