中国・厦門を拠点とするプリンター機器メーカーのHaninが、3月17日から19日に上海・国家会展中心で開催されるTCT Asia 2026に出展する。同社は、エラストマー 3Dプリント向けに特化した商業用AMシステム「LCD-L298」を世界初公開するとともに、独自技術Selective Jet Fusion(SJF)を搭載した産業用システム「SJF-P380」も披露する予定だ。
LCD-L298 — エラストマー専用設計のシステムが世界初公開
LCD-L298は「Machines to Systems(機器からシステムへ)」というHaninのコア哲学のもと開発された商業用AMシステムで、TCT Asia 2026での世界初公開となる。エラストマー素材専用に設計されており、LCD(選択的領域透光)技術を採用。従来のLCDプリントシステムが抱える光強度の制限を克服するとHaninは説明しており、デュアルコンポーネントエラストマー印刷において高精度と高効率を両立するソリューションとして、柔軟素材の応用可能性を大きく広げるとしている。
注目すべきエラストマー 3Dプリント市場
エラストマーとは、ゴムのような弾性を特徴とするポリマー素材の総称であり、応力下でも伸張し、解放されると元の形状に戻る。積層造形の分野では、TPU(熱可塑性ポリウレタン)やTPE(熱可塑性エラストマー)といった熱可塑性エラストマーが代表的な素材として広く使われており、柔軟性・耐久性・衝撃吸収性が求められるフットウェア、医療機器、自動車部品、ロボット部品などの分野での採用が進んでいる。
エラストマー 3Dプリント市場は急速に拡大している。複数の市場調査レポートによれば、同市場は2024年の約5億5,000万ドルから2030年には約22億ドル規模へ成長する見込みで、年平均成長率は約26%に達するとされている。需要を牽引しているのは、カスタマイズされた柔軟部品へのニーズの高まりと、AMの産業応用の拡大だ。
こうした市場環境の中、Haninが汎用機ではなくエラストマー専用システムの開発を選択したことは、AM市場全体のより大きな変化を映している。AMが成熟するにつれ、特定の素材群に最適化された専用ソリューションが、あらゆる用途に対応しようとする汎用アプローチに取って代わりつつある。
HaninとSJF-P380 — 背景となる技術基盤
Haninは中国・厦門に本拠を置く総合プリンター機器メーカーで、サーマルプリントヘッドの世界トップサプライヤーとしての地位を長年にわたり維持してきた。2024年の中国サーマルプリンター市場ブランドランキングでは、EpsonやGprinter、SNBCといったグローバルブランドと並び総合6位にランクインしており、より広範なプリンター業界における同社の確かな実力を示している。AM事業部はFDM、SLA、SLM、LCDなど複数の3Dプリント技術を擁し、コンシューマー市場から産業市場まで幅広く展開している。
Haninの産業用AMポートフォリオの中核をなすのが、同社が商標登録する独自のポリマーパウダーベッド技術「Selective Jet Fusion(SJF)」だ。光開始剤と熱開始剤を導入することで局所的な粉末焼結を促進し、部品を層ごとに積層造形するプロセスであり、独自の単溶液成型技術・閉ループ温度制御・インク液滴モニタリングを統合している。このSJF技術を搭載したフラグシップシステム「SJF-P380」は2024年5月のTCT Asia(上海)で初公開されており、TCT Asia 2026にも出展される。
ブース情報
- 開催日:2026年3月17日〜19日
- 会場:国家会展中心(上海)
- ブース:Hall 8.1H、Booth 3B08
AM Insight Asia の視点
LCD-L298は、積層造形において最も成長の速い素材セグメントのひとつへの、明確な勝負手だ。このシステムの核心にある技術的主張、すなわち「デュアルコンポーネントエラストマーにおける従来のLCDプリントの光強度制約を克服した」という点は、プレスリリースの言葉だけでは検証できない種類の詳細だ。実際の造形精度はどうか。現時点で対応している素材は何で、ロードマップはどこへ向かうのか。StratasyやCarbonといった確立されたエラストマーAMソリューションのプレイヤーと比べて、Haninはどこに差別化の軸を置いているのか。
また、Haninは2Dプリンター業界では確固たる存在感を持つ一方、そのAMポートフォリオはまだ初期段階にある点も見逃せない。LCD-L298は、同社がプリンター分野で培った技術を、信頼性の高い産業用AMソリューションへと転換できるかどうかを測る、ひとつの試金石になる。






