Pop MartがBambu Lab MakerWorldにLabubu著作権侵害訴訟――プラットフォーム責任の限界を問う

3月 5, 2026

A conceptual illustration of the copyright dispute over 3D-printed character models.

中国の玩具大手Pop Martが、世界で最もアクティブな3Dモデル共有プラットフォームを運営するBambu Lab MakerWorldを相手取り、人気キャラクター「Labubu」のレプリカをユーザーがアップロードしたことを理由に、上海市浦東新区人民法院にLabubu著作権侵害訴訟を提起した。裁判は2026年4月2日に予定されている。この訴訟の核心にあるのは、3Dプリンティング業界でいまだ明確な答えが出ていない問いだ。ユーザーが著作権で保護されたコンテンツをプラットフォームにアップロードした場合、プラットフォームの法的責任はどこから始まり、どこで終わるのか。

Pop Mart、Bambu Lab MakerWorldへのLabubu著作権侵害訴訟を上海の裁判所に提起

Pop MartはBambu Lab(深圳拓竹科技有限公司)およびその子会社、Shenzhen Maker World TechnologyとShanghai Contour Technologyを相手取り提訴した。訴状の焦点は、ユーザーがMakerWorld上に無償で公開・共有していた数千件のLabubuの3Dモデルファイルであり、そのいずれもBambu Lab自身が作成・アップロードしたものではない。

2023年にローンチされたMakerWorldは、月間アクティブユーザー数で世界最大の3Dモデル共有コミュニティに成長しており、家具からおもちゃ・フィギュアまで幅広いカテゴリにわたる100万件以上のモデルを収録し、月間アクティブユーザーは約1,000万人に達する。Bambu Lab自体は2020年にドローン大手DJIの元メンバーが創業し、ユニコーン企業へと成長した。

一方、LabubuはけっしてマイナーなIPではない。このキャラクターは2025年に世界的な知名度を獲得し、同年のPop Martの総売上収益の30%以上を占めた。2025年だけで中国税関が押収した偽造Labubu製品は183万点に上り、この訴訟が持つ商業的な重みを示している。

訴訟を受けてBambu Labは、MakerWorld上のPop Mart関連モデルをすべて削除する措置を速やかに講じた。しかし一括削除の際に操作上のミスが発生し、錠前工具、ケーブルクリップ、絵筆ホルダーなど、侵害ファイルとは一切無関係の多数のモデルが同時に非公開となった。Bambu Labはその後謝罪し、影響を受けたモデルのほとんどを復元した。

プラットフォーム責任とセーフハーバーの限界

この訴訟の法的核心は、3Dモデル共有プラットフォームがユーザーによる著作権侵害に対して責任を負うかどうかという点にあり、Napsterなどデジタル音楽共有プラットフォームの黎明期に問われた問いと直接重なる。

中国の法律専門家は、Bambu Labは3Dプリンターのメーカーであると同時にMakerWorldの運営者でもあることから、ユーザーがLabubuをはじめとする人気IPの3Dモデルをプラットフォームにアップロードして共有する行為が著作権侵害にあたることを「知っていたか、知るべき立場にあった」と指摘している。Pop Martの法定代理人は、Bambu LabがLabubuキャラクターに関する複製権・配布権・情報ネットワーク送信権を侵害したと主張している。

Bambu Labは「セーフハーバー」原則を防御の根拠として持ち出すとみられる。これは、プラットフォーム運営者が侵害コンテンツの存在を知らなかった場合、または通知を受けた後に速やかに削除した場合に責任を免除される法的原則だ。しかし、Bambu Labがコンテンツを削除したのは訴訟提起後であり、予防的な対応ではなかったという事実は、この主張を大きく弱める。月間アクティブユーザー1,000万人という規模において、かつLabubuが2025年に世界中で最も話題になったIPのひとつであった状況下で、「知らなかった」という主張は説得力を持ちにくい。

中国の3Dプリンティング業界への広範な影響

Pop Mart対Bambu Labの訴訟は、孤立した争いではない。競合プラットフォームでも同様の問題が確認されており、CrealityのCreality Cloud、ELEGOOのNexprint、AnycubicのMakerOnlineはいずれも人気IPを無断使用したモデルを掲載しているとして報告されている。3Dプリンティングの枠を超えれば、レーザー加工機メーカーxToolのコミュニティプラットフォームAtommでも、ユーザーがニンテンドーのピカチュウやディズニー映画『ズートピア』のキャラクターのプリントデータを公然と共有している事例が見られる。

Bambu Labの立場の皮肉は見過ごせない。同社は2025年10月、自社プラットフォームMakerWorldのクリエイターが公開したモデルを無断で再アップロードしているとして、Creality Cloud・Nexprint・MakerOnlineに対して自ら法的措置を起こしている。つまり、自社エコシステムのコンテンツ保護には積極的に法的手段を講じながら、他者のIPについては自社プラットフォーム上での流通を放置していたことになる。

業界アナリストは、中国の消費者向け3Dプリンティングセクターの成長を牽引してきた「ハードウェア+エコシステム」ビジネスモデルに内在する構造的リスクを指摘している。各プラットフォームは、人気カルチャーIPを題材にした無償モデルの充実を一因として大規模なユーザーベースを築いてきた。月間アクティブユーザーが数千万人規模に達すると、元のIP権利者が被る商業的損害は無視できない水準となり、「個人使用」という主張は法的根拠を失っていく。

CrealityやAnycubicのように上場プロセスを進める企業にとって、プラットフォームエコシステムにおけるIP賠償リスクは、投資家や規制当局からの審査対象として存在感を増していく可能性がある。

AM Insight Asia の視点

AM Insight Asia Perspective

成長モデルの核心にある矛盾: 今回の訴訟は、消費者向け3Dプリンティングの成長ストーリーが抱える根本的な矛盾を浮き彫りにした。MakerWorldのようなプラットフォームは、人気カルチャーコンテンツを印刷できるという魅力を一因として巨大なユーザーベースを構築してきた。月間アクティブユーザーが1,000万人に達した今、「グレーゾーン」という論理は、法的措置を取る資力と動機を持つIP権利者に対する説明として、もはや通用しない。

アジアの3Dプリンティング業界への警告: この訴訟は、中国の2社間の争いにとどまらない。アジアの3Dプリンティング業界全体へのシグナルだ。Creality、ELEGOO、Anycubicも同様の圧力にさらされている今、「ハードウェア+エコシステム」モデルはプラットフォーム事業者の責任の終点とユーザーの自由の始点を明確に定義しなければならない。この問いはもはや仮定の話ではない。

法的転換点: 4月2日の審理は、アジア全体、さらには世界の3Dプリンティング企業がモデル共有コミュニティをいかに設計・運営するかを再定義する先例となり得る。ユーザーがアップロードした著作権コンテンツに対してプラットフォーム運営者の責任を認める判決が出れば、業界の主要プレイヤー全員のリスク計算を根底から変えることになる。

訴訟前に動くべきだった: Bambu Labの立場において最もダメージが大きいのは、訴訟そのものではなく、そこに至るまでの経緯だ。Labubuは2025年に世界で最も注目されたIPのひとつであり、MakerWorld上には数千件のLabubuファイルが流通していた。その規模において「知らなかった」は有効な防御にならない。それでもBambu Labが動いたのは、Pop Martが訴訟を起こした後だった。一方、自社クリエイターコミュニティのコンテンツを無断掲載する競合プラットフォームに対しては、躊躇なく法的手段に踏み切っている。自社エコシステムは積極的に守りながら、他のIP権利者の権利は放置するというダブルスタンダードは、4月2日の法廷でBambu Labが答えを迫られる最も難しい論点になるかもしれない。