Original

Formlabs、低価格レジン3Dプリンター「Form Studio 1」をTCT Shenzhen 2026でお披露目

10月 18, 2026

Form Studio 1 on display at the Formlabs booth at TCT Shenzhen 2026, with its translucent base in different colors | Photo: AM Insight Asia

固定観念で大魚を逃した産業用メーカーが、低価格機市場で動き始めた

AM Insight Asia(AMIA)は、10月14日から16日まで中国・深圳で開かれた3Dプリンティングの展示会「TCT Shenzhen 2026」を現地で取材した。Formlabsは会期2日目の15日、自社ブースで新しいレジン3Dプリンター「Form Studio 1」の実機を公開した。同社は前日の14日、プロ向けレジン3Dプリンターとして世界で最も安価だとするこの機種を発表し、同日から受注を開始している。本体価格は約11万円から(1ドル=約158円で換算、以下同)で、出荷は11月16日に始まる。主力機Form 4の約4分の1という価格で、高価格機で培った技術とソフトウェアを低価格帯に持ち込んだ点に、コンシューマー機と産業用機という従来の分類を越えようとするFormlabsの狙いが表れている。

布が外された15日、深圳での実機公開

Formlabsのブースでは、会期初日の14日、展示機に布がかけられていた。15日の新製品発表イベントで布が外され、Form Studio 1が公開された。

共同創業者でCEOのMaxim Lobovsky氏は発表に際し、「私たちはForm 1をつくり、プロ向けのレジン3Dプリントをより多くの人の手に届けるためにFormlabsを始めた。Form Studio 1はその志を次の段階へ進めるものだ」と述べた。

Form 4の技術を土台にした新プリントエンジン

Form Studio 1は、Formlabsが自社開発したLow Force Display(LFD)を基にした新しいプリントエンジンを搭載する。28個のLEDとレンズアレイで、造形面に6 mW/cm²の均一な光を当てる。露光用の液晶パネル(LCD)のピクセルは35 µmで、アンチエイリアシングによってピクセルより細かい形状も表現する。同社によれば、大半の造形は2時間未満で終わる。造形サイズは20.0×12.5×23.5 cmで、Form 4より高さが2.5 cm大きい。

レジンはカートリッジから自動で供給・加温され、手作業でレジンを注ぐ必要がない。造形物は、たわませて外すタイプのビルドプラットフォーム(Build Platform Flex)を使えば工具なしで取り外せる。発売時点で専用の印刷設定が用意されたFormlabs製レジンは9種類で、別売のResin Tank Proを使えばサードパーティ製レジンも使える。

Form Studio 1 with its cover open and the build platform raised | Photo: AM Insight Asia
カバーを開け、ビルドプラットフォームを上げた状態のForm Studio 1 | Photo: AM Insight Asia

プレスリリースは造形成功率98%を掲げる。ただし脚注によれば、これは第三者試験で98.7%を記録したForm 4と同等だという意味で、Form Studio 1自体の信頼性試験は続いている。

周辺機器として、洗浄と二次硬化を1台でこなすForm Studio Wash+Cure(約3万1,000円)、印刷中の揮発性有機化合物(VOC)を吸着するVOC Extractor、造形の様子を内蔵カメラで遠隔確認できるスマートフォンアプリForm Mobileも同時に発表した。

本体下部は半透明のケースで、発売記念のFounder’s Editionでは、この部分の色をグラファイトと限定3色(aqua、teal、violet)から選べる。Founder’s Editionの販売は11月30日まで、または在庫がなくなるまでだ。右側面からは基板が透けて見え、コアなファンが喜びそうな仕掛けになっている。

The Form Studio 1 main board, visible through the translucent case on the right side | Photo: AM Insight Asia
右側面の半透明ケース越しに見えるForm Studio 1の基板 | Photo: AM Insight Asia

約11万円の最小構成に含まれるのは、本体とレジンタンク、標準のビルドプラットフォームだけだ。レジンの造形物は洗浄と二次硬化が欠かせないため、Build Platform FlexとForm Studio Wash+Cureを加えた約15万円のセットが、実際に使い始めるための構成になる(いずれも米国価格、税別)。

安全性を第三者認証で示す

レジン3Dプリンターは細かな造形ができる一方、液体レジンの臭いや、揮発性有機化合物を吸い込むことへの懸念がつきまとってきた。Formlabs自身も、いまのレジン3Dプリントは安全面で無法地帯に近いと指摘している。

その中でForm Studio 1は、同社によれば、レジン3Dプリンターとして初めてUL GREENGUARD Gold認証を取得した。米国の認証機関ULが、製品から室内に放散される化学物質の量を評価する認証で、Goldはその中でも厳しい区分にあたる。子どもや高齢者が長い時間を過ごす学校、保育施設、病院での使用を想定した基準だ。VOC Extractor使用時の総放散量は、UL 2819の基準で220 µg/m³未満に抑えられる。

認証の対象は、Alpha ResinとVOC Extractor(約2万8,000円)を組み合わせた構成に限られる。造形室は密閉構造で、同社は専用の換気設備やテントがなくても、家庭や小規模オフィス、教室に置けるとしている。安全だというメーカーの主張を、第三者機関の試験で裏付けた点に重みがある。

同時発売のAlpha Resinは、Grey、White、Black、Clear、Model、Fastの6種類で、価格は1リットル約4,600円から。推奨どおりに後処理した造形物は、ISO 10993に基づき30日を超える長期の皮膚接触に適合する。Formlabsによれば、Alpha Resinはすべて米オハイオ州の自社工場で製造・試験している。

細かく造形できることと、設計通りの寸法に仕上がることは違う

Form 4(約41万円から)との価格差は、仕様に表れている。光源はForm 4の60個のLED・16 mW/cm²に対して28個・6 mW/cm²で、フィラー入り材料用のミキサーとレジンタンク内の異物検知を省き、制御システムは6つから5つに減った。専用設定のあるFormlabs製レジンも、Form 4の23種類に対して9種類にとどまる。

一方で、ピクセルはForm 4の50 µmより細かい。ここで押さえておきたいのは、解像度と寸法精度が別の性能だという点だ。解像度は、光をどれだけ細かい単位で当てられるかを示し、マスク式光造形(MSLA)方式では露光用LCDのピクセルサイズで決まる。寸法精度は、完成した部品が設計データの寸法にどれだけ近いかを示す。レジンは硬化時に収縮し、造形中に部品にかかる力でも形がわずかに変わるため、細かく描けても設計通りの寸法に仕上がるとは限らない。

1〜30 mmの部位の寸法公差は、Form Studio 1が±0.5%(下限±0.08 mm)、Form 4が±0.15%(下限±0.02 mm)だ。公表値から計算すると、20 mmの部位ではForm Studio 1が±0.1 mm、Form 4が±0.03 mmになる。フィギュアのように細部や質感の再現が価値になる用途にはForm Studio 1が、嵌合部品や治具のように寸法が合わなければ使えない用途にはForm 4が向く。Formlabs自身も、フィギュア・模型ではForm Studio 1を、機能試作や最終製品ではForm 4を最上位に評価しており、2機種の役割を明確に分けている。

AM Insight Asia の視点

産業用3Dプリンターのメーカーは、これまで個人向けの市場を避けてきた。1台あたりの利益が薄く、個人ユーザーへのサポートにも手間がかかるからだ。3D Systemsは2015年12月、約16万円の家庭向け機「Cube」の生産終了を発表し、収益性の高い業務用と産業用に経営資源を集中させた。Stratasysも、2013年に買収したデスクトップ機のMakerBotを2022年にUltimakerと統合し、連結対象から外している。

これは産業用メーカーの誤算だった。市場も売上も産業用のほうが大きく、手間のかかる低価格機の市場に関心を払う理由はなかったのだろう。ところが蓋を開けてみれば、低価格機は性能の向上が速く、市場の広がりも速く、より大きく稼げる市場になっていた。2020年創業のBambu Labは、中国メディアによれば2025年の売上高が約2,350億円(1元=約23.5円で換算)を超えた。Stratasys(約871億円)と3D Systems(約611億円)の2025年の売上高を合わせた額を上回る規模だ。Stratasysは同年、約165億円の最終赤字を計上している。Bambu Labの2026年の販売目標は約5,600億円とも報じられている。

Bambu Lab自身も当初は企業での利用を想定していなかったが、その機械は世界中の企業に導入されて治具や試作に使われ、2025年には企業向けのH2D Proも投入した。「コンシューマー機か、産業用機か」という、誰が使うかによる分類はもう崩れている。いま市場を分けているのは、どんな機能をいくらで提供するか、つまり低価格機か高価格機かだ。低価格機は企業にとって最初の1台であり、上位機へのステップアップの入口であり、メーカーにとっては販売チャネルにもなる。

今回のニュースの核心は、産業用機メーカーのFormlabsが、この変化にいち早く対応したことにある。自ら低価格機を手がけることで、新しいエコシステムの構築が始まった。造形準備ソフトのPreForm、遠隔管理のDashboard、スマートフォンアプリのForm Mobileは上位機と共通で、後処理機のForm Wash・Form CureやVOC Extractorも上位機と併用できる。約11万円の機械で覚えた操作とソフトが、そのまま約41万円のForm 4、約113万円のForm 4Lへつながる。低価格機と高価格機で生態系が分かれてきた業界で、一社が両方を一つの流れにつなぐ試みであり、AMIAがこの製品を高く評価する理由もここにある。

低価格機のユーザーは、高価格機で培われたノウハウを部分的に受け継いだ機械を使えるようになる。Form 4の技術を土台にしたプリントエンジンに加え、材料ごとにFormlabsの技術者が検証した印刷設定が用意され、出荷前には1台ずつ28項目の校正と試し刷りが行われる。照度や一部の機能は削られているが、高価格機で積み上げてきた品質の仕組みが、約11万円の機械に持ち込まれた。

材料の扱い方も上位機と同じカートリッジ方式だ。AMIAが取り上げたSnowXの卓上金属3DプリンターSnowPodも、金属粉末を密閉カートリッジで扱う。扱いが面倒な材料を、手を汚さずに使える形に包む流れが広がっている。その分、材料は割高になる。Formlabsの比較表でも、Alpha Resinは1リットル約4,600〜6,200円で、安価なサードパーティ製レジンの約1,900〜3,200円を上回る。それでも、面倒な機械は使われなくなる。手間を減らすことは、低価格機を買って終わりにさせず、使い続けてもらうための条件だ。

過去の撤退理由だった薄利とサポートにも手を打っている。GREENGUARD Gold認証の条件を満たす構成は、約15万円のセットにVOC Extractorを加えた約18万円で、Alpha Resinの継続購入が前提になる。保証期間を延ばし事故時の修理を受けられるサービスプランは、月約1,600円(年約1万6,000円)の定額だ。本体で稼ぐのではなく、周辺機器、消耗品、サービスで継続的に稼ぐ設計になっている。

次の注目点は、Form Studio 1から入ったユーザーが実際にForm 4へ上がっていくのか、そして低価格機の側からBambu Labのような勢力がどこまで上の価格帯へ登ってくるのかだ。日本を含むアジアでの価格と発売時期は、まだ明らかになっていない。

対象企業について

Formlabsは、米マサチューセッツ州サマービルに本社を置く3Dプリンターメーカー。光造形(SLA)方式と粉末焼結積層造形(SLS)方式の3Dプリンター、後処理装置、ソフトウェア、45種類以上の材料を手がける。同社によれば、1980年代以降に創業したプロ向け3Dプリンティング企業として最大で、年間売上高は約395億円を超え、顧客が造形した部品は5億個以上にのぼる。中国では「形朗科技」の名称で事業を展開している。