なぜBambu Labは、モールではなく大学を選んだのか
繁華街でも駅前でもなく、深圳やバンコクのような巨大モールとも違う。Bambu Labが選んだのは、東京大学の正門前だった。
東京都文京区本郷、東京大学本郷キャンパスの正門を出てすぐの本郷通り沿いに、中国茶と日本茶を扱う「OCHARU製茶所」がある。その店内、茶道具の並ぶ棚の下にフィラメントの箱が積まれた一角に、中国発の3DプリンターメーカーBambu Labの認定ストアが同居していた。

茶道具とフィラメント箱が同居する、正門前の小さな店
文京区本郷6丁目2-10の建物には、1階に「OCHARU製茶所」、2階に「御茶流茶道場(東大正門店)」があり、いずれもIKKO株式会社が運営する。代表取締役社長は、国家最上級資格の中国一級茶鑑定士を持つヤン・チーウェイ氏で、OCHARUブランドの茶葉選定・ブレンドも同氏が手がけている。中国茶の専門家が、日本茶ブランドの品揃えや茶道体験まで手がけているのがこの店の特徴だ。1階には抹茶ラテやソフトクリームのほか、黄山毛峰や龍井、普洱茶といった中国茶の茶葉、GYOKUROやGENMAICHAなど日本茶のティーバッグが並ぶ。

2階の御茶流茶道場には、茶道具を並べた棚と、庭園の映像を流すモニターを備えた本格的な茶道体験スペースがある。

その1階に、「Bambu Lab Authorized Store 東京大学店」がある。外観には店名の看板が掲げられ、直営ではなく認定を受けた店舗であることを示す。
店内には、X2DやP2S、H2Dなど計6台の3Dプリンターが並ぶ。フィラメントの箱は、茶器や茶葉缶が並ぶ棚のすぐ下に積み上げられており、茶道具とプリンター資材が同じ空間に収まっている。


レジ横の壁面には波形のパネルにフィラメントの色見本がずらりと並び、東京タワーの模型やパンダの置物、ローズやガチョウの造形物など、印刷サンプルも棚に展示されている。フィラメントはその場で購入でき、プリンター本体も店頭で直接注文できるという。

プリンターが並ぶスペースでは今後、講習会や体験会も予定されているというが、具体的な内容はまだ固まっていないという。

深圳・バンコクの「モール型旗艦店」とは正反対の立地選び
Bambu Labは海外で、大型ショッピングモールへの旗艦店出店を続けている。2025年9月、中国・深圳の南山区にあるMixC深圳湾ショッピングモールに、世界初となる2階建ての直営フラッグシップ店をオープンした。大型の3Dプリント造形物や、28台のプリンターで組んだオブジェなど、体験型の展示を備える店だ。
2026年7月には、タイ・バンコクの高級モール「サイアム・パラゴン」にタイ初の認定プレミアムストアが開業した。現地代理店3D Studioの最高経営責任者は、同社のタイ事業が前年比で倍以上に成長していると説明している。
これらはいずれも、不特定多数の来店客が見込める大型モールへの出店だ。日本国内でも、代理店のサンステラが2026年夏に東京・池袋で体験型実店舗「サンステラ3Dステーション池袋店」を出店する予定で、こちらは繁華街への出店となる。一方、東大正門前の店舗は繁華街でもモールでもなく、大学の正門前という、通行人の母集団が大きく異なる立地を選んでいる。
AM Insight Asia の視点
これは、海外のモール型旗艦店とは異なる論理に基づく出店だ。モールが広く浅く認知を稼ぐのに対し、大学正門前は露出量こそ限られるが、技術やものづくりへの関心が相対的に高い学生や教員、研究室、サークルといった大学関係者が集まる、質の高い母集団を狙える。ピンポイントで大学をターゲットにしたプロモーション戦略だ。
取材で得た関係者の話を踏まえると、この立地選びは偶然ではなく意図的なものとみられる。ただし対象が学生に限定されているのか、教員やサークルも含む大学関係者全体を見込んでいるのかは、現時点で判断できない。
同じブランドでも、市場ごとに違う流通の型を試しているということだろう。
対象企業について
Bambu Labは、DJI出身のエンジニアらが2020年に設立した中国・深圳拠点の3Dプリンターメーカー。2022年にKickstarterで初代モデル「X1」を発表し、以後X1シリーズやA1シリーズ、H2Dなどを展開している。中国・上海やアメリカ・テキサス州にも拠点を持ち、個人向け・教育向け・商用向けの3Dプリンターとフィラメントを製造している。





