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Formnext Asia Shenzhen 2026 Field Report Part 1: 総集編

9月 13, 2026

The show floor drew large crowds. | Photo: AM Insight Asia

来場者・出展社ともに過去最大、その裏で進む激しい変化

深圳国際会展中心で8月26日から28日にかけて開催されたFormnext Asia Shenzhen 2026が、来場者数・出展社数ともに過去最大を更新して閉幕した。筆者は昨年のFormnext Asia Shenzhen 2025にも足を運んでいるが、会場の空気は昨年と比べて大きく変わっていた。しかし数字を分解すると、単純な拡大とは言い切れない実態が見えてくる。国際化のスピードは全体の伸びを大きく上回り、出展社の顔ぶれはこの1年でおよそ半数が入れ替わったとみられる。Part 1では、その全体像を数字とともに整理する。

The opening ceremony for Formnext Asia Shenzhen 2026. | Photo: AM Insight Asia
Formnext Asia Shenzhen 2026のオープニングセレモニー。 | Photo: AM Insight Asia

来場者3万4202人、海外来場者は157%増

Formnext Asia Shenzhen 2026の来場者数は3万4202人(延べ来場4万1986人)で、前年比65%増となった。うち海外からの来場者は1887人で、前年比157%増。中国国内を含む113の国・地域から来場があった。海外来場者の内訳では、マレーシアとタイが上位2カ国となり、以下ロシア、シンガポール、米国、インドネシア、日本、韓国、ブラジル、ベトナムと続く。上位10カ国・地域のうち7つがアジア地域だった。

新設のGlobal AM Channel Partner & Dealer Matching Meetingは、中国のAM企業が海外での販売・サービス網を構築できるよう、海外のディストリビューター・ディーラー・サービスプロバイダーと1対1でマッチングする場として設けられた。今回は27の国際チャネルバイヤーと、中国・韓国の16社の増材製造サプライヤーが参加した。参加したディストリビューター・ディーラーの拠点国には、ブルキナファソ、フランス、イラン、メキシコ、ネパール、フィリピン、ルーマニア、サウジアラビア、セネガル、スペイン、ジンバブエが含まれ、これまでAM業界であまり存在感のなかったアフリカ・中東諸国からの参加が目立った。

出展社330社、新規は6割超

出展社数は330社で、20,000平方メートルの会場面積は前年比60.5%増となった。このうち新規出展社は210社超で、全体の63.5%を占めるという。

AMIAの試算では、この数字は出展社の入れ替わりの速さを示している。2025年の出展社数は265社(うち新規131社、全体の約49%)だった。今回の継続出展社を330社から新規210社を差し引いた120社と仮定すると、2025年の265社のうち約145社(約55%)が今回は出展していない計算になる。ただしこれは継続出展社がすべて前年の出展社に由来するという単純化した前提での試算であり、離脱した企業の内訳(機械メーカーか材料メーカーか、その他か)や、離脱の理由までは分かっていない。それでも、これだけ多くの企業が入れ替わり立ち替わり出展に名乗りを上げていること自体、市場が活性化していることの表れといえる。

メディアツアー

会場は多くの人で溢れかえっており、その中で注目企業のキーパーソンと直接やり取りするのは容易ではない。Formnextの良いところの一つは、そうした状況でも主催者が事前に出展社のキーパーソンを手配し、メディアツアーとして複数社を回れる点だ。今回のメディアツアーでは、金属AM、樹脂AM、AIなど各分野の注目企業を複数訪問した。

A sign marking the invited VIP media tour. | Photo: AM Insight Asia
招待されたVIPメディア向けのツアー。 | Photo: AM Insight Asia
The Bambu Lab booth, visited during the media tour. | Photo: AM Insight Asia
メディアツアーで訪れたBambu Labのブース。 | Photo: AM Insight Asia
A demo of Meshy AI's multi-color printing tool. | Photo: AM Insight Asia
メディアツアーで訪れたMeshy AIのブース。マルチカラー印刷向けAIツールのデモの様子。 | Photo: AM Insight Asia
Makera's booth displayed several CNC machines. | Photo: AM Insight Asia
メディアツアーで訪れたMakeraのブース。複数のCNC機が展示された。 | Photo: AM Insight Asia
The Kings 3D booth, visited during the media tour, displaying intricately detailed 3D printed objects. | Photo: AM Insight Asia
メディアツアーで訪れたKings 3Dのブース。精巧な3Dプリント造形物が並んだ。 | Photo: AM Insight Asia
The HP booth, visited during the media tour, showcasing 3D printed footwear made with MJF technology. | Photo: AM Insight Asia
メディアツアーで訪れたHPのブース。MJF技術による3Dプリント靴なども紹介された。 | Photo: AM Insight Asia
The Addireen booth, visited during the media tour, displaying copper cold plates for AI servers. | Photo: AM Insight Asia
メディアツアーで訪れたAddireenのブース。AIサーバー向けの銅製コールドプレートが展示された。 | Photo: AM Insight Asia

材料カテゴリーの拡大が止まらない

材料カテゴリーの出展社数は、2025年に前年比76%増という際立った伸びを記録した。実際に会場を歩いても、フィラメントメーカー・販売店のブースの多さがとにかく目立った。金属粉末では、Avimetalのようなチタン・ニッケル・アルミなど各種合金粉末を手がけるメーカーも出展していたが、会場全体を見渡すと、金属よりも樹脂系(材料を含む)の存在感の方が大きく、深圳を含む大湾区にコンシューマー向け企業やプリントファームが集積していることが背景にあるのかもしれない。これに加えて、中国製3Dプリンターの輸出が2026年上半期だけで362万台(輸出額は14.3億ドル)に達し、機械そのものの普及が急速に進んでいることも影響しているとみられる。機械が行き渡った先には、その機械で使う材料の需要が生まれる。この点については、別途樹脂編で取り上げる。

The desktop AM section was packed with visitors. | Photo: AM Insight Asia
デスクトップAM区画は多くの来場者で混み合った。 | Photo: AM Insight Asia

第1回 国際3Dプリントフットウェア・デザインアワード

今回新設された「1st International 3D Printed Footwear Design Awards」には100件超のエントリーがあり、デザイン・ブランド・製造機器・材料の各部門で30の賞が贈られた。審査委員長はFootwearologyの創業者、Nicoline van Enter氏が務めた。会場では3Dプリント靴の展示が数多く見られ、3Dプリント靴に限定したアワードがあえて新設されたこと自体、この領域への注目の高さをうかがわせる。

FDM、DLP/LCD、MJF/SLSという製法別のデザイン賞に加え、ブランド単位の特別賞も設けられ、「Pathfinder Award」(この分野に業界で最も早く取り組んだブランドに贈られる賞)はANTA、「Trusted Choice Award」(最も人気の高かった3Dプリント靴に贈られる賞)はSTARAY、「Rising Star Award」(今後の成長が期待される新興ブランドに贈られる賞)はCALLNAKがそれぞれ受賞した。大手スポーツブランドであるANTA(中国発祥で、Arc’teryxやSalomonなどを傘下に持つAmer Sportsの筆頭株主でもある、売上高世界最大級のスポーツ用品メーカー)の受賞は、3Dプリント靴がニッチな実験領域から、大手ブランドの本格的な関心領域に入りつつあることを示す一つの兆候といえる。

金属、樹脂、AI、それぞれの動き

会場では金属AM、樹脂・デスクトップAM、AI活用のそれぞれで異なる動きが見えた。金属AMでは、BLTやFarsoon、HBDといった大手に加え、Kings 3Dのブースの存在感が目立ち、AddireenやHan’s Matrix3DなどがAIサーバー向けの熱管理部材(銅製のコールドプレートなど)を中心に新製品を投入していた。Han’s Matrix3Dは、銅・熱管理部材の量産に向けたデュアルレーザー機「M420G」を今回披露している。デスクトップ機では、Bambu LabやElegooのブースに加え、Crealityがノズル自動交換システム「KliTek」を搭載した新型機K3を国内で初披露し、Snapmakerも独自の色再現技術「Full Spectrum」による造形物を展示していた。一方、産業用の樹脂AMでは、HPがMJF技術を使った新型機「MJF 1200」をアジア太平洋地域で初披露し、TPM3D Printing TechnologyもSLS機の新型「CF-250」を披露するなど、大型・産業用機メーカーの存在感も見られた。中でも、これまで民生・オフィス向けプリンターで知られるEpsonが、今回初めてFormnext Asia Shenzhenに出展していたのは驚きだった。AI活用では、Meshy AIやTripo AIといった3Dモデリング系のブースに人が集まっていた。特にTripo AIは、会場に向かう道中にも大きな看板を掲げており、その力の入れようがうかがえた。これらの詳細は、別途金属編、樹脂編、その他編でそれぞれ掘り下げる。

A launch ceremony for Han's Matrix3D's new machine. | Photo: AM Insight Asia
Han’s Matrix3Dの新型機発表セレモニー。 | Photo: AM Insight Asia
A Tripo AI billboard on the road to the venue. | Photo: AM Insight Asia
会場に向かう道中に掲げられたTripo AIの看板。 | Photo: AM Insight Asia

フォーラムも高い熱気

会場では13のフォーラムセッションで、延べ100件超のプレゼンテーションが行われた。AI・データセンター熱管理、ロボティクス・エンボディドインテリジェンス、3C電子機器・スマートフォン、金型製造・バインダージェット・レーザーAMなどの重点テーマが組まれ、「中国3Dプリントファーム・コンシューマーAMエコシステム大会」(China 3D Print Farm and Consumer-Grade AM Ecosystem Conference)の円卓フォーラムには立ち見が出るほどの人が集まっていた。

The roundtable for the China 3D Print Farm and Consumer-Grade AM Ecosystem Conference drew a standing-room crowd. | Photo: AM Insight Asia
「中国3Dプリントファーム・コンシューマーAMエコシステム大会」の円卓フォーラムは立ち見が出るほどの盛況だった。

VoxelMattersの共同創業者兼CEO、Davide Sher氏は、「Overseas Market Opportunities for Chinese 3D Printing Companies Seminar」に登壇し、「From Mass Adoption to High-end Value: The Chinese AM Playbook for Europe(大量普及から高付加価値へ、中国AM企業の欧州市場攻略法)」と題した講演を行った。中国のAM企業が低価格帯での量産効率を足がかりに、欧州で高付加価値の産業用AM市場へ進出する道筋を、中国自動車メーカーの欧州進出をモデルに論じた。

Davide Sher of VoxelMatters delivering his talk. | Photo: AM Insight Asia
VoxelMattersのDavide Sher氏による講演。 | Photo: AM Insight Asia

AMだけでは完結しない、広がるハイブリッド化

会場では、AM単体では完結しない領域の広がりも見えた。樹脂で造形した部品を屋外で使用する際の後加工(耐候性コーティングなど)を手がける企業に加え、Makera、Infimaker(5軸デスクトップCNC「K1」を展示)のようなデスクトップ向けCNC機を持ち込む企業の出展も目立った。

Makera's booth featured the launch of its new CNC machine, the Z1. | Photo: AM Insight Asia
Makeraのブースでは新型CNC機「Z1」が披露された。 | Photo: AM Insight Asia

ユーザーが本当に求めているのは「AMで作られたもの」ではなく、単に「欲しいもの」そのものである。AMだけでは強度や耐候性、精度が足りない場合、CNC加工と組み合わせたり、コーティングなどの後加工で補ったりする必要が出てくる。会場で見られたCNCや後加工関連の出展の多さは、AMを単体の製造技術としてではなく、他の製造手段と組み合わせて使う「ハイブリッド化」が広がり始めていることを示しているとAMIAはみている。

拡大の裏で進む激しい入れ替わり

新規出展社が全体に占める割合を年次で比べると、2025年の約49%から2026年には63.5%へと上昇しており、入れ替わりの激しさ自体が年々増している。会場面積の拡大率(60.5%増)よりも出展社の流動性の高まりの方が際立っているとも言え、供給側が需要の急拡大に追いつききれず、参入と撤退を繰り返しながら均衡点を探っている状態がうかがえる。

需要側の指標を見ると、同時開催のPCIM Asia Shenzhenも2万5313件の来場を記録し、公式フォトライブストリームの視聴数は36万件を超えた。来場者数・オンラインでの関心はいずれも着実に伸びている一方、供給側である出展社はその拡大に追いつくために激しい新陳代謝を繰り返している。拡大と入れ替わりは矛盾する現象ではなく、同じ急成長市場の表と裏だといえる。

AM Insight Asia の視点

深圳のAM市場は、急速な拡大局面のただ中にあり、選別はまだこれからだとAMIAはみている。中国製3Dプリンターの輸出が数百万台規模に達し、機械そのものの普及が一段落したことで、次の需要の焦点は材料や消耗品に移った。この需要を見込んで新規参入が相次いだ結果、出展社の顔ぶれは1年で大きく入れ替わるほどの流動性を持つに至った。実際に会場を歩いた印象では、似たような製品を掲げるブースがあまりに多く、どの企業を重点的に見るべきかを判断する材料に乏しかった。裏を返せば、それだけ多くの企業が似たような製品で市場に群がっている段階にあるということだ。ここで重要なのは、次々と現れる新興勢力に対して既存の大手がどう動くか、そして新興勢力が知名度や信頼性の低さをマーケティングやブランディング戦略でどう補っていくか、という点だろう。この流れが特に鮮明なのが材料・フィラメント分野であり、別途樹脂編で論じる。

なお、会場では著作物やキャラクターなどの知的財産権に明らかに抵触するとみられる展示も一部で見られたが、こうした出展社については、写真の掲載を含めAMIAの記事では取り上げていない。

対象企業について

Messe Frankfurtグループは、自社の展示会場を持つ世界最大級の見本市・会議・イベント主催企業である。フランクフルト・アム・マインの本社と29の子会社で約2,700人の従業員を抱え、世界各地でイベントを主催する。2025年度のグループ売上高は約7億6,600万ユーロ。Formnext Asia Shenzhenは、Guangzhou Guangya Messe Frankfurt Co Ltdが主催し、世界最大の積層造形専門見本市であるFormnextのアジア展開の一環として開催されている。次回のFormnext(フランクフルト本展)は2026年11月17日から20日に開催される。